レッスンをしていると、とてもとても時間がかかって、なかなかレッスンを終えられない生徒さんがいらっしゃいます。
「うーん。うまくすべてが配置できない…」と感じているのでしょうね。
でも本当のことを言えば、人の集中力は90分が限界と言われています。
それ以上、どんなにがんばっても、満足できることってないのですよね。
でもね。
「しかたない…これであきらめる」とレッスン時間の終わりとともに帰っていくわけですが、おうちに帰ってしょんぼり包みをといて飾ってみると…「あれ?悪くないじゃない???」ってなります。
ほぼほぼそうなります。
フラワーアレンジメントも花束ブーケにしても、完璧というものは存在しません。
限界があるのです。その限界とどう折り合いをつけるか?
つまりあるところまで行ったら、あきらめることが必要だよってことなのです。
今回はどんな限界があるのか?についてお話してみたいと思います。
フラワーデザインの限界1-生きているお花だからこその限界
何度もお話していますが、お花というもの自体が、色・形・大きさ、同じものが二つとありません。
頭では分かっていても、気づけば、レゴのブロックのように、同じ色で形が同じものを使って組み立てるものとつい同じ感覚で向き合ってしまいがちです。
そんな様子が見えた時は、「適当がちょうどいいんだよ」と声掛けしますが、残念ながら奥深くの意識までは届かないみたいです。
完璧な配置があるはずだ!
とどこか奥深い所で、そんな意識ががんばって働いているのだと思います。
もちろん本人はそんなつもりはないんですけどね。
さらに悲しいお知らせですが、今日は完璧!と思って配置できたとしても、翌日にはそれぞれの花材たちが、少し開いてみたり、光の方向に曲がってしまったりしますから、ますますもって完璧なんてことはありえないんですよね。
私たちの目は本来、見えるものをサクっとしか認知しません。
デザインが違う服を着ていたとしても色が同じだと、同じ服だと思われてしまうってお話、聞いたことはありませんか。
つまり、どこかにきれいに見える見せ場を作っておけば、それ以外はざっくりでよかったりします。
むしろ見せ場以外の所を作りこめば作りこむほど、見せ場が目立たなくなる、なんてことも起こります。
ここだ!というお気に入りの一部をしっかり作る。それ以外のお花たちには「ごめん!今日は脇役をお願いします」と妥協する。
お花という、それぞれが素敵な個性をもった生き物ものに向き合う以上、割り切りも大切なのです。
フラワーデザインの限界2-自分自身の経験という限界
ちょっと残念な話になっちゃうかもしれませんが、ご自分の限界、というのもあります。
にこはなの信念として、絶対にフラワーデザインにセンスは関係ありません。
(職人レベルのデザイナーさんになりたい訳ではなければ、ですが)
ここでいう限界とは、どれだけのバリエーションの花材と出会ってきたか?という経験の数や、どれだけのデザインスタイルを見て・経験してきたか?によるものです。
それによって自分が持つデザイン引き出しの数が変わってきますから、自分に生み出せるものは当然、その引き出しの数を大きく超えることはありません。
また、自分の頭の中に浮かぶデザインを、実際に形にするだけの技術があるか?ということも関わってきます。
頭の中には壮大なデザインが浮かんだとしても、それを目の前の花材で再現するには、テクニックが必要です。
そのテクニックが今の自分にはないのであれば、目の前のお花たちにゆだねて、気の向くままにデザインしていく、というのが大事かな、と思います。
でも、落胆しないでくださいね。
両方とも、経験を重ねていけば、どんどん蓄えられていくわけですから、むしろ伸びしろ十分、と言えますね。
フラワーデザインの限界3-花束ブーケの場合は一焦点の限界
さらに、花束やブーケの場合に、うまく表現したいことができない理由の一つに、一焦点であること、というのがあります。
一焦点。つまり花束の場合は、組んでいるときの手の中、飾っているときは結んでいる場所を焦点とした放射状の世界で表現できるもの、という縛りがあります。
ついついこの辺りにこの子がいてほしいと思ってしまったりしますが、決してまっすぐではない茎を持つお花たちであり、お花部分の重みにもいろいろあるわけですから、思った通りにはいかないことが多いです。
アレンジメントならできることも、花束やブーケでは表現できないことがたくさんあるのです。
お花と向き合う時にはあきらめが必要
このように、様々な限界があるフラワーデザインの世界。
ついつい完璧を目指してしまう。
普段から、そんなところがある人には、ちょっとしんどいことも。
「いい塩梅」「いい加減」
そんな言葉がぴったりなお花の世界で楽しむためには、あきらめることが必要なのです。
ポイっと放り投げるのではありません。
もともと完璧なんでない。答えもない。
だからこそ、自分の好きをワンポイントしっかりこだわって作る。
主役がビシっとなったら、後は「木 その1」「石 その1」「通行人」でよいのです。
通行人が着飾っていたら、おかしなことになります。
主役以外の配役の子たちには、今回はいい感じで目立たずにさらっと歩いてもらう、それがフラワーデザインのコツだったりするのです。
お花を習うことで、本当の自分に気づくかもしれません。
あなたは
完璧を目指してしまうタイプですか?
細かいところに気を取られてしまって全体が見えなくなってしまうところがありますか?
どんなタイプの人も、お花と触れ合うことで「いい加減がいい感じの自分」に出会えるかもしれませんよ。